ということはまだあまり研究はそれほど深くは進んでいないということか?
第2幕 - ということはまだあまり研究はそれほど深くは進んでいないという...
角田理論(母語の違いによって虫の音を左右どちらの脳で聴くかが決まるという説)が発表された1970年代以降、脳機能計測の技術(fMRIやPETなど)は飛躍的に進化しており、聴覚や言語処理に関する脳科学の研究自体はかなり深く進んでいます。
「深く進んでいない」というよりは、研究が進んだ結果、当時の説がそのままでは支持されにくくなったというのが正確な状況です。
実態は以下の通りです。
- 実験の再現性が確認されていない 角田氏の実験(聴音テストを使った左右の耳の優位性調べる方法)は、他の研究者が最新の脳機能計測装置を用いて追試を行っても、同様の結果が安定して再現されませんでした。科学の世界では「再現できないデータ」は定説として扱われません。
- 脳の処理モデルがより詳細に解明された 近年の脳科学では、音の処理は「右脳か左脳か」という単純な二分法ではなく、音の周波数や時間変化の細かさに応じて、両方の脳が複雑に連携して処理していることが分かっています。
- 文化的・認知的な側面の解明 「日本人が虫の音を声として楽しむ」という事実自体は存在します。しかしそれは、脳のハードウェア(神経回路の自動処理)の違いというよりは、「虫の音に意味や情緒を見出す」という文化的学習や注意の向け方(ソフトウェア側)の違いであるという見解が主流です。
したがって、研究が遅れているわけではなく、科学的な検証が進んだ結果、「脳の物理的な処理領域の違い」とする説には疑問符がつき、文化や意識の向け方の問題として捉え直されているのが現状です。
▼ 「右脳・左脳」神話の科学的実態を検証した書籍
「日本人は西洋人と音の聞き方が違う」「右脳と左脳の機能差」といった言説がなぜ広まり、科学的にどこまでが事実で何が誤解なのかを左右脳研究の第一人者が解き明かした一冊:
『「左脳・右脳神話」の誤解を解く』(八田武志 著 / 化学同人)- Amazon
対話目次(全幕)