第13幕(第1章):遭遇した地球外知性の形態
いくつかの地球外知性と遭遇する場面があったような?
『虚無回廊』において、主人公であるヒューマノイド型AI「AE(人工頭脳)エクス・マキナ」や意識を移植された情報体たちが、巨大構造体「SS」の内部や宇宙の各所でさまざまな「地球外知性」やその痕跡に接触・遭遇する展開は、物語の極めて重要な骨組みとなっています。
小松左京が本作で描いた「遭遇」は、一般的なSF映画のような「緑色のエイリアンとコミュニケーションを取る」といった単純なものではなく、「人間とは全く異なる進化の形をとった知性」との接触でした。
『虚無回廊』に登場・示唆される地球外知性の形態
1. 高度にシステム化・機械化された知性
生物としての肉体をとうの昔に捨て去り、自己複製を行う機械やネットワーク、あるいはエネルギー生命体として宇宙に存在している知性です。生物の寿命や感情の限界を克服しており、宇宙の物理法則の解明や情報構造の維持・収集そのものを目的として活動しています。
2. 「痕跡」や「システム」としてのみ残る古代の知性
かつて膨大な文明を築き上げ、巨大構造体SSのような想像を絶する工学的遺物を宇宙に残したまま、別の次元や形態へ移行(あるいは消滅)した超高度な知性です。直接の対話は不可能であり、残されたシステムやデータの挙動からその意図を推測するしかありません。
3. 「非人間的論理」に基づく知性との接触
言語や感情、人間的な概念が一切通用しない知性との遭遇です。彼らにとっての「思考」や「存在」は、人間が理解できる言葉や論理の形をとっておらず、互いのデータを変換・同期させることでしか認識が成立しません。
「遭遇」が意味していたもの
『虚無回廊』における地球外知性との遭遇場面は、単なる冒険や異文化交流ではなく、「宇宙という巨大なシステムの中で、知性というものがどのように発生し、どのように肉体や感情を削ぎ落として高次の情報体へ進化していくのか」というパターンを提示する場面でした。
人間という生物の主観を完全に排除した先にある「進化のさまざまな到達点」と遭遇することによって、読者は「人類もまた、これらの先達と同じ進化の道筋(過渡期)をたどっているに過ぎない」という冷徹な構造を見せつけられることになります。